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イッツ・ショウタイム その2

本日のお品書き・すっぺっしゃ~る=「アルジャーノンに花束を」 下北沢・本多劇場にて 公演・劇団昴 主演:平田広明 演出:三輪えり花 脚色:菊池准

 「結末は知っているんだけどね。」とは、舞台が終わり、観客がバラバラと帰り支度をしている中で聞こえてきた誰かの言葉。そう、有名な小説が原作なだけにお話の流れは知っているの。知っていても、舞台での一体感は、また別のもの。こんなに胸が痛くなる内容なのに、涙ぐみさえするのに。でも見終わって、こんなに幸せ。

 「アルジャーノンに花束を」。お芝居の始まりは研究の開始を決定する委員会、そこでは・・・、などという説明は置きましょう。それは、ただのあらすじ。本筋ではないのだから。

 純粋に賢くなりたい、そうすれば一人ではなく、みんなと話ができる、一緒にいられる、そうチャーリーが信じたこと。それは決して彼だけの願いではない。IQが低いわけではない者たちも等しく願うこと。彼が得て、また失った知能は、一人ではいたくない、という彼の願いをかなえる力にはならなかった。彼の痛みは、私たち自身の痛み。

 そっれにしても♪ 楽しいところは楽しかったのですよ。フェイが登場してくると、舞台がぐっと明るくなるし。彼女はチャーリーを救いはしないけれど、明るく照らしてはくれたので。それとバート、彼との握手シーンは心に残る名演出だと思います。パン屋の困ったコンビも、人って気はいいけど冷たくもあるし、残酷だけど優しくもなれる生き物だってこと、わからせます。良くも悪くもそれがフツウの人間なんだって。

 そういえばフェイ役の松谷さんがご自身のホームページでダイエットしなくっちゃって書いてらして、なぜあの細身の松谷さんが? と思っていましたら、よくわかりました。確かに、あの衣装では、ちょっとの腹肉も許されませんね(^ ^;

 しかしチャーリー役の平田さん、上手すぎです。身内に知的障害の子どもがいる人間には辛いくらい。でも、大丈夫。ここは日本。そして私たちは一人じゃない。法律は悪く変わっていってるけど、私たちはローズにはならない。ありのままのこの子が、ありのままでは社会にいられないのはわかっているけど、それでも大丈夫。一人にはならないから。一人にはしないから。それが、この舞台を見た私の素直な気持ち。

 それにしてもとっても良い席でした。カーテンコールの挨拶のとき、主演の平田さんが真正面だったくらいどセンター。いや、もちろん高さはあるのだけど、なんかドキドキしてしまうくらいに真正面でした。舞台美術も、よく見えたので、迷路な感じが堪能できました。どなたか存じませんが、あたしにこの席をご用意くださった方、本当にありがとうございました。

 ところで、「見たよ。良かったよ。」と、友人に話したら、彼女いわく「で、どうだったの?」と、聞き返すのです。なんのことかわからなくて、説明を求めたら、悲劇だったかどうか、が知りたかったのだ、ということ。・・・悲劇、ではないです。もちろん、喜劇でもない。得たものを失った、でも、だから不幸、というわけではない。結局、応えきれずにパンフレットの演出ノートで演出家の三輪えり花さんの言葉を引用するしかありませんでした。要約すれば、「自分が生きていることを人に認めてもらうこと、それが人の生きる糧。そのために人はもがきながらも生きていくのだ。」と。そして、それはなんて愛おしい姿なんだろう、と私は続けたい。言葉にするには、あまりにも美しすぎて、気後れさえしてしまうのだけど。

 2008年には、3月、4月、7月、9・10月と旅公演があります。西日本の皆様には残念ながら、すぐ近く、というわけには行かないかもしれませんが、機会があれば是非、ご覧ください。

 ・・・あっ、これって、この日程だと、来年夏にあると期待している紐育星組さんのレビュウショウが7月にできないってこと?・・・ガーン。8月の後半でもいいです。彼哉さん、どうかスケジュール調整してね♡ 家族みんなで楽しみにしてるので。貯金までしてますm(_ _)m

Simokitazawa ちなみにこちらは劇場に入る前に、少し高いところから撮った下北沢の雑踏。ここにいる人たちは、これが当たり前の日常の世界、なんでしょうけど、あたしにとっては、こんな人ごみにいるだけでドキドキわくわくしてしまいます。

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