本編(というほどではないですが)はこちら
http://bigwig.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_dfcc.html
その1.
「・・・はい、谷です。」
「うわーん、谷さーん、聞いてよぉ!」
「な、なに、なんなの?」
「あのね、あのね、もーちゃんのホワイトデイ用の買出しに行ったの、この間。」
「ふんふん。」
「それでラッピング用の袋とかを見てたら、もーちゃんいつの間にかいなくなってたのよ。」
「ほ~。」
「でね、どうしたのかと思って心配になって、でも最初にいた場所を動かないのが迷子の鉄則でしょ?だから待ってたの。」
「ふ~ん。」
「そしたら30分くらいして、ようやく戻ってきたのよ。ひどいと思わない?」
「あ~、そだね。」
「そだねって・・・、ちゃんと聞いてないでしょ、谷さん。」
「あーのーねー、時ちゃん。そもそも森哉くんは何歳よ?」
「18歳。」
「フツーは母親とホワイトデーの買出しに一緒に出かけること自体がおかしいの。」
「うう・・・、それはなんとなくわかるけど、なんか皆さんが期待してるって言うから・・・。」
「ああ、それは 聞いたことあるよ。でもね、それは彼が子離れしない母親にしようことなく付き合ってるのが評価されてのことだと思うんだよね。」
「そうなの?」
「まあ、十中八九そうだね。でなきゃ引かれまくるって。ま、あなたもそろそろ本気で子離れしなさい。」
「・・・頑張る。」
「それよりさぁ、私的にはその空白の30分に彼がどこで何をしてたか、気になるところなんだけどね。」
「えっと、トイレ・・・じゃなかったと思うけど。」
「そんな長いトイレがあるかってーの。ほら、前に言ってたでしょ?なにやら本命らしき女の子がいるって。」
「あ、うんうん。言った言った。」
「ふふふ~ん、そりゃ何か買ってたね、特別な彼女用に。」
「えええ~、あたしを放り出してぇ?」
「当たり前だと思うけど。クククっ。時ちゃん、いよいよ子離れして、これからは旦那との生活を見直しなさいよ。」
「・・・今更、そんなこと言われても。」
「まあ、まあ、私も用事あるから切るよ。元気だしなって。また聞いてあげるからさ。」
「うん、ありがとね。じゃあ、また今度。」
「じゃあね。」
その2.
「姉ちゃん、何それ?」
「あ、のぼさん、丁度いいところに。」
コタツに当たりながら不思議そうに手の中のものをもてあそんでいる姉に声をかけると、ふだんどおりのふんわりとした笑顔が返ってきた。おもむろにリボンで飾られた小さな紙袋を渡される。
「何、これ?」
「今泉さんがこの間の晩御飯のお礼にって。ホワイトデーの人と同じで申し訳ないけどって。クッキー、とってもおいしいのよ。」
「・・・あ、この間のメガネくんか、兄貴の後輩の。」
そういうとにっこり微笑んだ。それにしても何てマメなヤツ。あの兄貴とタメで付き合ってるにしちゃ人間的に堅いよな。でも、それより・・・。
「で、姉ちゃんは何もらったんだよ。」
「あ、これね。きれいでしょう?」
そういって手の中のきらきらしたものを窓からさす光にかざして見せた。それはストラップだった。銀の星とクリスタルの小さな粒がまだ淡い春の陽に輝いた。
「色々とみのさんが面倒をかけてるからって、下さったのだけど、おかしいよね?みのさんはわたしの兄で、なのに学校の後輩なだけの今泉さんが気を遣ってるの。」
「ふーん、いいんじゃねえの。」
ついぶっきらぼうな言い方になる。鈍いからな、この姉は。
「でさあ、それどうすんのさ?」
「うん、少し悩んでたの。ストラップをつけるような物が思いつかなくて。」
「そうだよなぁ。携帯とか持ってないし。鍵とかは?」
「わたしが持ってるの自転車の鍵くらいだもの。こんなに繊細なのに、傷つけたら可哀相。」
つい無言になって頭をかきむしる。女の持ち物なんて訳わからん。すると急に立ち上がって裁縫箱を取り出した。
「ほら、見て、のぼさん。これ・・・、家庭クラブで作業していたときに余ったのだけど・・・。」
取り出したのは細い革紐だった。器用な指先があっという間に留め金を通してストラップをネックレスに変身させた。
「ね、ちょうどいい。」
首だけを動かして同意を示した。さっきまで窓の陽光にかざされていたストラップは若草色のセーターの胸元を飾っている。
「・・・喜ぶんじゃねーの、今泉さん。」
「そうかしら?」
「そうだよ。あ、いっけねー、今日も店の手伝いあったんだった。下ごしらえしねーと親父にどやされる。」
「頼りにされてるものね。」
背中で声を聞きながら、もう返事はしない。したりしないんだ。
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どうも気恥ずかしいシリーズになってまいりました。仕事でグダグダ煮詰まってるので、つい甘々なお話が書きたくなりまして。
まあ、さすがに武士の情けで今泉くん自身は登場しておりません。こうやって青少年のコイバナは世間の話のネタになるのね、って感じで。
次回は、いよいよお芝居ネタを本格的に始動・・・できるといいなぁ~。予定は未定の世の中です。
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