食欲の秋
今月の展示テーマ。もう何のひねりもございません。秋ですから。ただそれだけ。
当然ながら料理本ですとか食べ物の出てくる本を展示しています。こどもの本、特に絵本なんかは「ぐりとぐら」のカステラみたいに美味しそうな食べ物が描かれているので選びやすいのですが、大人の小説から、となると、案外難しい。「東京バンドワゴン」の食卓シーンなんかは読んでいて、一緒にご飯を食べている気持ちになれて、こんな風に食事ができたら偏食の子なんかいなくなるんじゃないかな、と思えるくらい。読んでいるからこそ選べるんですよ。だから、どうしても若い作家さん、若い読者層に人気のある本に偏ってしまって、高齢の方が好まれる傾向の本が選べなくてね。
職員さんに思案顔で相談されて、書架を眺めていて、ふと足が止まったのが「指輪物語」の前。サムワイズがフロドの旦那のために乏しい材料をやりくりして作るウサギのシチューのシーンがすごく好きなんです。他にも本の中に出てくる食べてみたい食べ物ベストテン(あたし個人の趣味)に必ず入ってくるレンバスもあるし。・・・とか思ったのですが、展示コーナーに並べたら浮くよなぁ、絶対。ということで諦めました。コーナーの様子が変われば、また出すかも。
それから東洋文学の書架のところへ来て、ひらめきました。これなら誰が見ても食べ物関連。「宮廷女官チャングムの誓い」を早速展示。これなら幅広い層にわかるからいいや。ブームは終わっているけど、懐かしくて手に取ってくださる方もあるだろうし。
それとマンガの棚から駅弁をテーマにした旅マンガをワンセット並べて、一段落。貸し出しがあれば、追加していかないといけないので、頭の引き出しをもう一度整理しとかないと。
本日のお品書き
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剣客商売庖丁ごよみ (新潮文庫 い 17-20) 著者:池波 正太郎 |
中一弥さんの表紙絵もすごく好きなんですが、引っ張ってこれませんでした。書店や図書館で見てくださいね。
食べ物が美味しそうに描いてある小説はなんだ、と訊かれれば、かなりの人が上げるだろう池波正太郎さんの作品。その中で「剣客商売」シリーズの料理を実際に作ってみた本がこちら。プロの料理人さんが調理されてレシピを書いておられます。自分にはちょっと無理ですが、料理好きな人であれば、材料が揃いさえすれば作れると思います。
あぁ、それにしても「剣客商売」シリーズは、冒頭の根深汁を味わうところからノックアウトされました。葱しか入っていない味噌汁がこんなに唾を飲み込まされるとは。一気に小説の中に入ってしまいました。他にも、誰か作ってくれないだろうか、などと思わせる料理がたくさん出てきます。お菓子もおいしそう。本当に舌を豊かにしてくれる作家さんです。
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