short story

死なばもろとも

 「ふうん、そんなに大変だったんだ。」

 クーラーの効いた喫茶店で熱いカフェオレを飲む。こんな贅沢はないんじゃないだろうか。そんなことを思いながらテーブルの上に置かれたチケットを見た。二枚重ねて置かれたそれは、某コンビニの名前の入ったチケット入れから出されたものだった。持ち主はにこにこしていたかと思うと、急に眉間に皺を寄せた。

 「・・・うん、ダフ屋に狙われてるかもしれない。」

 慌てて手で口を押さえた。やばいやばい、吹くところだった。いい年をして飲み物を飲んでいるときに噴き出す破目になるのは勘弁してくれ。というより、何を言っているんだろう、この子は。じゃない、じゃない、子だなんて。精神年齢は間違いなく『子』でいいが、実年齢は立派な大学生の息子がいるにふさわしい年齢だった。

 「谷さん、大丈夫?そんなにカフェオレが熱かった?」

 「う、まあ、そんなところ。で、時ちゃん、なんでそのレアなチケットが二枚あるのかな?」

 そう、さっきまで彼女は大学生の息子に手伝わせて、チケット大戦なるものがいかに大変かを語っていたのだ。なんでも、いやいや手伝っていたはずの息子でさえ空恐ろしく感じるほどチケットが売れていくのを示す×印が増えていったらしい。それ以前にハングアップして手続きをすることさえ困難だった・・・、とネット音痴の母に説明したらしい。結局、チケットを購入できたのは電話でリダイヤルしまくった本人だったというから、息子はしなくてよい苦労をさせられたわけだ。

 「だって、もーちゃんも一緒に行ってくれるって言ったから。」

 もーちゃん、つまりは彼女の息子の森哉くんは今泉家の大事な一人息子で、能天気な母親を反面教師にしたのか、実直な父親を見て育ったのか、年の割には老成したところがある青年だ。たまに論語読んで育ったのではないか、という疑問すら沸くことがあるくらいだから、イマドキ珍しい孝行息子といってもいい。だからチケット獲得の手伝いくらいはするだろうが、いくらなんでも母親と二人で旅行に行きたいか?二十歳前の男が?

 「あ、待てよ。」

 「何を?」

 「ごめん、今のは独り言。その、一緒に旅行に行くって約束したのは何時のこと?」

 「えっとぉ・・・」

 やっぱり。天井に答が書いてあるかのように目が宙をさまよっている友人を見て、納得した。何かのはずみで約束したにせよ、それが今回のこれとは限らない。

 「あ、そうそう。一年半くらい前になると思う。まだ、高校二年だったし。」

 度の過ぎた親孝行は、子離れさせられなくなるよ、森哉くん。若干、めまいを覚えて、軽くこめかみを揉んだ。思ったより昔じゃなかったけど、とりあえず今回のこれのことではない約束には違いない。

 「それじゃ、仕方ないね。で、そのレアなチケットはネットオークションでも売る?」

 「ダメよ、っていうかヤダ。そんな転売屋みたいな真似したくないもん。」

 「でも、他に方法ないでしょ?チケット手に入らなかった人に有効利用してもらうには、今ならネットオークションが一番当たり前になってきてるし・・・。やり方がわからないなら、それこそ森哉くんにでも手伝ってもらえばいいじゃない。」

 「だってねぇ、元々高いチケットの桁が一つ違うんだよ、ネットオークションのひどいとこなんか。とても堅気な人がやってると思えないし、ファン心理につけこんだあくどい商法だと思う。」

 お、珍しくマジ怒りだ。ふうん、ファン意識というのは怖ろしいねぇ。よく舌が回りました。少し引いた立ち居地で見ているが、本当はわかっている。次の展開がどうなるか。

 「だからお願い。一緒に行こう。」

 そうだね、そう言うと思ったよ。本当はチケットが二枚あるのを見たときからわかってた。

 「しかたないね。」

 深いため息をつきながら、私は言うんだ。

 「心から行きたいファンには申し訳ないけど、死なばもろとも、付き合いましょう。」

 ほらね。

    *******

 チケット大戦ネタです。谷さんは面倒見が良すぎです。それとも時ちゃんが甘え上手なのか。

 実際のチケット大戦を戦った人たちのレポを元に構成してみました。すごい勢いで空席がなくなったらしいです。発売30分で、ほぼどこも予定枚数終了だったとか。そして速攻、ネットオークションが高値で始まったそうです。初めてネットオークションのチケット情報を見て、びっくりしました。さすがに一枚25万円、というのはあたしの見間違いでしたが(2万5千円だと思われる)、18万円というのは確かにありました。もしかしたら連番で二枚組だったかもしれないけど、なんて法外な。

 実際、社会人やってればチケットの発売時間に仕事してることもあるだろうし、それで夜になって、ようやくコンビニのチケットサービス利用してみたら全部売り切れだったら、ネットオークションとか利用するしかないでしょう。だからネットオークションそのものを否定はしないけど、転売目的はやめようよ。ひどいよ、これ。それと気をつけないといけないのは、チケットの購入権利というのが対象になっていて、これは空手形つかまされることもあるらしいとのこと。正直、チケットがほしくても、正規ルートのキャンセル待ちか、ネットオークションもある程度、市場が落ち着いてから購入したほうが良さそうだな、と思いました。

 それにしても行ける人が、みんな行けるといいなぁ。

| | コメント (0)

コント:健康第一

 いつもの今泉家のリビング。卓上にはどでかい梅酒の瓶とグラス、大皿と小皿が数枚。

時枝:谷さん、お代わり飲む?

谷 :あ、ありがと。それにしても、きれいな色になったね。去年作ったんだよね、この梅酒。

時枝:旦那の実家から大量に梅を送られてきた時にはパニクっちゃった。

谷 :そうだった、そうだった。泣き声で電話かけてくるから何事かと思ったよ。

時枝:手伝ってもらって助かっちゃった。一個ずつ手間をかけないといけないんだもん。

谷 :あー、大変だった。しばらく梅干もいらないと思ったもんね。

時枝:ちょうど頂き物のブランデーもあったからチャレンジしたけど、美味しくできて良かった。

谷 :うん。美味しい。ふふっ、飲みすぎてしまうのが問題だね。

時枝:どんどん飲んで。あんまり飲んでくれる人は家にはいないんだもん。

谷 :森哉くん・・・は未成年だからね。旦那は?

時枝:だって、メタボ、心配だもん。

谷 :おーい、私の健康はどうでもいいのか?

時枝:そんな、鋼鉄の肝臓の持ち主が何を言ってるのよ。しかも体脂肪率20%切ってるくせに。

谷 :(急に低い声で)・・・朝は細い足、夜は太い足・・・。

時枝:な、何?なんかの都市伝説?

谷 :はあ?なんで都市伝説?

時枝:じゃあ・・・、なぞなぞ?朝は四本足みたいな?

谷 :違うって。あのさ、この間、仕事の関係で講習を受けたの。朝から夕方まで一日。

時枝:学校の授業みたいな?

谷 :そう。もうずっと座ってたからさ、夕方には足がむくんでパンパン。

時枝:あ、それで夕方には太い足・・・

谷 :そういうこと。若いときはこんなことなかったんだけどね。

時枝:やっぱり年を取ると新陳代謝が悪くなるのね。

谷 :悲しいねぇ、しみじみと。

時枝:でも、ほら、やっぱり食べたり、飲んだりは楽しくしよ。その方がきっと体も喜ぶし。

谷 :・・・うん、ま、明日は休みだし、ゆっくり飲みますか。

時枝:それじゃ、改めてカンパーイ。

  ******

 仕事の関係で講習を受けていたときに思いついたネタ。いや、ちゃんと講習は聞いてたよ。最後のテストも満点だったし(たぶん誰でも満点取れるだろう内容でしたが)。

 それにしても一日中座っていると体が悲鳴を上げます。なんか体を動かすことを入れてほしかったです。谷さんではありませんが、足がむくみました。これって血管から水分が出てしまう状態だそうです。塩分を取ると余計にひどくなるので、塩辛いものは食べないように、また、カリウムがいいので生野菜とかトマトなんかを食べるといいそうです。むくむくらいならいいですが、これがひどくなるとエコノミー症候群、という可能性もあるので気をつけないといけませんね。

 ちなみに、この日の今泉家は、旦那は職場の旅行へ、息子も合宿で出かけたので、留守番がてら谷さんがお泊りに来ている、という設定でした。

| | コメント (0)

エキストラ

 バスから降りて、集合場所である公園に向かった。その公園はオフィス街の中心にあり、お昼には周辺で働くビジネスマンたちの格好の休息の場所になっているらしい。平日は背広姿が目立つ噴水の周辺にカメラなどの撮影機材などが置かれ、スタッフとおぼしき黒服の集団が慌しく動いていた。

 噴水の反射に思わず目を細めていると、こっちだと呼ぶ声がした。初夏の日差しに緑を濃くした植え込みの側で鈴木先輩が手を振っている。

 「遅くなりました。」

 駆け寄りながら詫びた。

 「いいって、いいて。田中のヤツが急に頼んだんだろ?」

 「ええ、朝、家に電話がかかってきて、バイトをしてくれって言われて。随分、切羽詰ってたみたいだったんで、とりあえずここに来たんですけど。」

 鈴木先輩は僕の知らない他のメンバーと顔を見合わせながら、頭をかいた。

 「やっちゃったんだよなあ、あいつ。」

 ニヤついたり、呆れ顔になったりしながら、一頻り田中先輩の話で花が咲く。どうやら二股発覚で朝から(昨日の夜から?)修羅場だったらしい。

 「まあ、とりあえず人数揃える努力をしたから許してやるか。それじゃ、えっと・・・、今泉君だったけ、今日は夕方までかかるけどよろしく頼むわ。」

 「こちらこそ。エキストラのバイトなんて始めてで、何をどうしたらいいのかさっぱりですから、よろしくお願いします。」

 「なんてこたないよ。ほとんど待つのが仕事みたいなもんだからさ。」

 そういいながら、ざらっと今日の予定を聞かされた。

 風光明媚で知られる地方都市を舞台にした二時間サスペンスドラマのロケが昨日から行われている。今日は、夫の怪しい様子を疑うヒロインが、夫の働くビルを訪ねてくるというシーンと、ここから少し離れた海の見える喫茶店でヒロインが友人に悩みを相談するシーンを撮るということらしい。すでにビル近くの交差点での撮影の準備は進められ、そっちのエキストラはスタンバイに入っている。僕たちは喫茶店への移動までは用がなく、ただひたすら声がかかるまで待つのが仕事らしい。

 「先輩は、よくこういうバイトをしてるんですか?」

 「うん、まあ、オレは演劇部のヤツに知り合いがいてさ。そいつから話が来るんだよな。そういや今泉君って、高校のときは演劇部だったんだろ?勧誘なかった?」

 「ああ、それは・・・。」

 確かに勧誘はあったが、それほど熱心なものではなかったし、何より僕は役者じゃない。舞台に立つのではなく、舞台を作るほうがやりたかった。その辺りの考えが違っていたので、入部は丁寧に断った。

 「・・・演劇部以上に田中先輩の英語研究会の勧誘のほうがすごかったんで。」

 「そら・・・、災難だったな。」

 笑いをかみ殺して答えられる。

杏野先輩といい田中先輩といい、どうやら僕は強烈な性格の人に振り回される巡り会わせらしい。

とはいえ、英語研究会に入ったこと自体は後悔していない。サークル名だけで判断すると英会話を学ぶことが活動の主体に見えるが、実は行動範囲が広い。もちろん、基本はそうなのだが、あちこちの幼稚園や保育園に出向いて英語で歌ったり人形劇を披露したりと外での活動が多いのだ。まだ一度しか、それも荷物運びとしてしか参加していないが、子どもたちが人形劇を見て小さな手で拍手をしたり、回らない舌で一緒に歌ったりする様子はとても微笑ましく、美しい光景だったから。

 そんなことをぼんやり考えていると、急に黒服のスタッフから声を掛けられた。

 「すみません、そろそろ喫茶店に移動するんで、あっちのタクシーに乗ってもらえますか?」

 「あ、は、はい。先輩、移動だそうです。」

 「おう、わかった。おーい、出発するぞ。」

続きを読む "エキストラ"

| | コメント (0)

だって退屈なんだもん

 「あー、もう退屈、退屈。」

 いつもの今泉家のリビングで当家の主婦がぼやく。

 「全く・・・。カレーが余るから片付けるの手伝って、っていうから来たのに、さっきから退屈、退屈って・・・。」

 あまり期待せずに、一応は抗議してみる。

 「だって・・・、退屈なんだもん。」

 心の中で、こっそりずっこける。

 「そんな文句言う暇があるなら、もっと手の込んだ料理を食べさせていただけると嬉しいのですがね。」

 「うう、谷さん、ひどい。今日はもーちゃんもいるはずだったから、あたし特製の野菜ごろごろカレーを作ったのに、急に出かけちゃうんだもん。しょうがないでしょ?」

 「カレーなら冷凍しとけば、また食べられるっつーの。」

 大学生になった息子をちゃん付けするセンスはさておき、主婦の知恵はどうした、主婦の知恵は。

 「そうだけど、そうだけど。・・・でも、ジャガイモは冷凍するとグジグジってヤ~な感じになるし。」

 「全く、さっきから退屈だって言うけど、こちとら、窓口で小理屈こねる客に付き合うこともなく、国や県からの提出目的も調査理由もわからん調べもんにわずらわせられることもない休日は、無為な時間こそが至福の一時なんだよ。そこんとこ理解して発言するように。」

 厳しく突っ込むと、カレーを黙々と口に運び始めた。ふむ、逃げたな。そう思いつつ、さっきから気になっていたカレンダーに目を向けた。予定がびっしりと書き込まれたカレンダー。あまり体調が思わしくない、ということで早期退職した旦那が再就職した先は地元の商店街の経理全般をお世話する会社。さして忙しくはない、と聞いていたのに、商店街関係のイベントや近所付き合いの諸々に駆り出されているらしく、空白の日が見当たらない。これじゃ退職前より忙しいんじゃなかろうか。

 「退屈・・・っていうより、さ。」

 声をかけると、ちょっとうるんだ目でこっちを見る。全く、世話の焼ける。

 「そんなに退屈なら、買い物にでも出かけようか?ほら、そろそろ夏物、そうだな、新しいサンダルを買わないと困るんだよね。食べたら、出かけようか?」

 「うん。あたしも、そろそろ夏物の下見とかしたかったの。紳士服も見ていい?」

 鷹揚にうなづく。見る見る明るくなる表情に、家族持ちの幸せがわかる。自分のためじゃなく、家族である大事な人たちのために、か。

 「あ、それと八月の最後の土日はあたしのために空けておいてね?」

 「はいぃ?」

 「約束したでしょ?また、付き合ってねって。」

 あ、目の前真っ暗になってきた。武道館再び、ですか・・・。全く。でも、まあ、こうしていられる間は、こうしていよう。時間は、人にとって有限。変わらないものなんてないんだから。

  ******

 久し振りに今泉母登場。具がごろごろしているカレーは「今日からマ王」のユーリ陛下のお母様であらせられるハマのジェニファー様の得意料理からいただきました。野菜はごろごろだけどお肉はこま切れとか使っているのでごろごろしてません。武道館ライブネタは、一度書いたのですが、あまりに自分に痛くて、しかも未熟だったので封印しております。今泉母は子ども時代にけっこう苦労しているのですが、今の姿からは想像できないもんで。

 ちなみに今泉君はデートとかではなく、先輩からバイトを押し付けられて急に出かけることになった模様です。お人よしなところは母より母の友人に似ているようです。 

| | コメント (0)

幕が下りて

 「おーおっしま~!!」

 幕が下りた向こう側の拍手やざわめきを舞台袖で聞いている大島に、後ろから突然首にぶら下がっている藤山。身長差約30センチ、これは武器になる。呼吸を確保するために、必死で藤山の腕を引き離そうとしている背高のっぽの彼は、今日のこの舞台の大道具を一人で作り上げた強者だ。

 藤山の暴走を止めようとネズミの衣装のまま、谷崎が走り寄った。二人がかりでようやくもぎはなした。

 「死ぬ・・・かと、思った。」

 そういいながら、大島は笑っていた。いつも温厚な彼だから、周りの連中が羽目を外して迷惑をかけてきても苛立ったそぶりを見せたことはない。でも、今日のこの笑顔は、舞台袖で聞く、あの拍手の音が引き出している。

 今日のこの舞台は、新入生歓迎会のために絵本の「歯いしゃのチュー先生」を元に作り上げたものだ。そしてこの舞台、腕利きの大道具係がいなくては始まらなかった。

 そもそもチュー先生はネズミで、なおかつ腕利きの歯医者なのだ。彼を頼ってたくさんの動物たちがやってくる。ネズミと同じサイズなら、なんのことはない、普通の人間同士の歯医者の治療を連想してもらえればいい。でも、例えば相手が豚だったら? あるいはさらに大きな馬だったら? いかにも腕利きであることを提示しなければ、なぜ狐の紳士がチュー先生に治療をしてもらいたがったのか、説得力に欠けることになる。

 そしてここがスタイグのすごいところだが、動物たちが擬似人間の社会を形成しているにもかかわらず、ネズミは肉食の大きな動物に食べ物として認識されているのだ。決して仲良しこよしの社会ではない。だからチュー先生は看板に「ネコやその他きけんな動物のちりょうはおことわり」と掲げなくてはならない。でも、彼は歯痛に苦しむ狐の姿を見て治療を断ることができなかった。さあ、どうなるのか。

 舞台にするときに一番悩んだのがここだった。最初の大きな動物の治療は書き割にしてナレーションをかぶせれば、まあ、なんとかならないこともない。ホリゾント幕に映像を映す方法もある。だが、狐の治療のためにチュー先生は狐の口の中に入らないといけない。

 「いやぁ、大島のおかげだよ。よくもまあ、こんな足場を組んでくれたよ。」

 「・・・叔父さん家が鉄工所だから、色々用立ててくれたんだ。オレは別に・・・。」

 大島はもぐもぐと口の中でつぶやいている。そう、確かに部材なんかを貸してもらったことや設営を手伝ってもらったことは事実だ。でも、舞台で狐の口がいやらしくチュー先生を飲み込もうと動くさまを設計したのは彼だ。彼が図面を引いて、言葉は少ないが丁寧に説明をして、この舞台はできたんだ。

 「おい、二宮、そこで何、ボーっとしてんだよ。」

 藤山に言われて、はっとした。そうだった。自分は、もうここにいるのだ。幕のこちら側に。こんな大道具を作ってくれるヤツがいて、下準備や色んな交渉事をこなす部長がいて、役者がいて・・・。

 「ほら、撤収、撤収。午後には体育の授業があるんだからな。それまでに片付けるぞ。芝居は打ち上げまでが芝居だかんな。」

 影の仕切り役、副部長兼会計の平田が指示を出した。大島はてきぱきと役目を終えた装置たちをばらしにかかった。藤山も慌てて小道具をケースにしまい始める。役者は舞台衣装のまま、冗談を飛ばしながらそれを手伝った。オレも、大島の横でドライバーを使う。目があって、にやり、と笑いあった。

 *********

 というわけで、コントと称して不定期に続けていた創作ものですが、さすがにコントとはいえなくなってきたのでカテゴリー「short story」ということにいたしました。今泉くんは大学生になっちゃったので出てこないし・・・。

 ウィリアム・スタイグという方は、本当に才能のある絵本作家です。絵柄はややマンガチックですが、説得力とスタイリッシュさは見事です。また作品そのものは書かれるべくして書かれている作品、と絶賛してしまいましょう。ぜひ「歯いしゃのチュー先生」以外の作品もお読みください。特に「ねずみとくじら」は友達と分かれないといけないときに、そっと手渡してあげたくなる本です。出版はいずれも評論社から。

 

| | コメント (0)